タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ

マスターピースを自己流で使いこなす

世の中にはたくさんの時計があるが、個人的にタグ・ホイヤー「モナコ」は好きなモデルである。なにせ「モナコ」は世界初の自動巻き式クロノグラフムーブメントであるクロノマチックを始めて搭載したモデルのひとつであり、世界初の角形防水スポーツウォッチでもある。しかも1969年に誕生したその前衛的なスタイルを、現代までしっかりと受け継いできたという物語も気に入っている。
ついでに言えば、モナコという街も好きだ。これまでに2回しか行ったことはないが、F1コースをぐるりと歩いて回って道の狭さやアップダウンのきつさなどを体感したり、グレース・ケリーのゆかりの場所を巡ったり、取材ではあるが数十億円もするラグジュアリーヨットに乗せてもらい、船上パーティでシャンパンとキャビアを堪能したりと、楽しい思い出ばかりだ。タグ・ホイヤー「モナコ」は、そのスペックからすると純然たるスポーツウォッチなのだが、モナコの街並みのように、どこか洒脱で華やかな雰囲気がある。そこが他にはない魅力なのだ。

• タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ
  自動巻き、SSケース、ケース径39㎜。962,500円(税込)
• 4年ほど前にモナコヨットショーの取材をした際の写真。港には超高額のヨットが停泊しており、リッチな空気に満ちていた。

こちらの商品を購入したい方はこちら そんな「モナコ」のパブリックなイメージは、1969年の初代モデルを継承した“逆リューズ”モデルだろう。ストラップはレザーで、ダイヤルは紺碧の海を思わせるブルーのモデルが一番人気だ。この“逆リューズ”というスタイルは「リューズが手首に食い込まないようにするための論理的設計」だといわれてきたが、名誉会長ジャック・ホイヤーさんにインタビューしたところ、マイクロローター式のベースムーブメントにクロノグラフモジュールを組み合わせる際にスペースがなく、仕方がなくベースムーブメントを180度回転させて組み合わせたため、9時位置側にリューズがきてしまったのだとか。そしてその言い訳として、手首の逸話を作り上げたというのが真相らしい。

そんなウンチク話も多い「モナコ」だが、2021年の新作の中で惹かれたのが、「タグ・ホイヤー モナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ」のメタルブレスレットモデル。H型のコマを使ったこのブレスレットデザインは、1970年代モデルを復活させたもので、がっちりとした重厚感もあって出来は良い。バックルの開ボタンを、ブレスレットのサイド面に沿わせるようにデザインしてスッキリ見せているのも見事だ。
ちなみに「モナコ」はスポーツウォッチながら、細部の磨き分けがかなり美しい。ベゼルの上面やケースサイドはサテン仕上げにしつつ、斜面はポリッシュ仕上げにすることでメリハリの効いた輝きを引き出している。そして搭載ムーブメントはCal.ホイヤー02になり、伝統的なモナコのスタイルを守りつつも、要所は現代的にアップデートしている。

• ブレスレットのバックルは、ケースサイドに合わせてデザイン。すっきりしていて綺麗だ。ポリッシュとサテンの仕上げ分けも巧み。
• 搭載ムーブメントは、自社製の「キャリバー ホイヤー02」。80時間連続駆動のロングパワーリザーブ仕様となっている。

こちらの商品を購入したい方はこちら 角形ケースというと、ジャガー・ルクルト「レベルソ」やカルティエ「タンク」が有名だが、こちらはアールデコ様式の長方形（レクタングル）ケースで優美な雰囲気がある。一方「モナコ」の場合は、あくまでもスポーツウォッチであり、ケースの存在感はかなりある。そこにメタルブレスレットを組み合わせると、腕元のボリューム感はかなり強まる。スポーツウォッチなのでカジュアルスタイルとの相性は良いが、僕ならジャケットスタイルにも合わせてみたい。タイドアップしたカッチリとしたスタイルではなく、オーバーサイズのカジュアルなス－ツで、インナーはカットソーくらいの気楽な感じはどうだろう？　ラウンドケースのドレスウォッチとも優美なレクタングルウォッチとも違った、カジュアルなコーディネートを楽しむのだ。
時計界のマスターピースでありながら、王道のスポーツウォッチとは違った個性があるタグ・ホイヤー「モナコ」は、メタルブレスレットを合わせることでさらに個性が強まる。しかしそれが自分らしく手元を楽しむための丁度いいアクセントになるのである。

• 角形のケースデザインのインパクトは絶大。
• ケースサイズは39㎜と比較的小ぶりなので、カジュアルはもちろんのこと、ジャケットスタイルとも好相性。

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